泉大津の“企業主導型”両親学級レポート② 産後うつ等を防止して、楽しく幸せに子育てができる社会へ 企業主導型の両親学級が地域で広がる 

泉大津の“企業主導型”両親学級レポート② 産後うつ等を防止して、楽しく幸せに子育てができる社会へ 企業主導型の両親学級が地域で広がる 

9月、泉大津のシーパスパークで開催された両親学級。初めての出産・育児に不安を抱える家族にとって、心強い味方となる両親学級ですが、“企業主導型”という新しい形の両親学級が地域で広がっています。産後うつ等の社会課題解決に向けた地域の活動がカギとなっているようです。

9月、大阪府泉大津市のシーパスパークで、妊娠中や産後のママやパパが参加する両親学級が開催されました。赤ちゃんの抱き方や、離乳食を通して子どもとコミュニケーションをとる方法など、初めての出産・育児をむかえるパパママにとっては貴重な時間となったようです。

この日開催された両親学級には大きな特徴があります。それは“企業主導型”ということです。
一般的に、両親学級は、自治体や病院などが主催しますが、企業主導型では、地域の企業の協力のもと開催されます。

なぜ企業主導型に注目が集まっているのか、主催者である一般社団法人ボディセンス・インスティテュート代表理事の髙橋由紀さんにお話を伺いました。

一般社団法人ボディセンス・インスティテュート 代表理事の髙橋由紀さん

コロナ禍が生んだ課題から始まった取り組み

「新型コロナウィルスの感染拡大の時、感染予防の観点から行政主催の両親学級が軒並み中止になってしまいました。それによって産後うつや育児に不安を抱える方が増えました。」(髙橋さん)

新しい命を迎える家族にとって大切な学びの場「両親学級」。本来であれば行政が中心となって提供してきたこの機会は、コロナ禍で多くの自治体が中止を余儀なくされました。その結果、産後うつや育児不安を抱える人が急増。髙橋さんは、産後うつケアをしている知り合いを通して、受け入れが追いつかないという切実な状況を目の当たりにしました。
この課題を受け、髙橋さんはじめ富山県で子育て支援に携わっていた有志が「民間で両親学級を立ち上げよう」と動き出します。会場や費用の課題を乗り越え、企業の協力を得ながら始まったのが“企業主導型”両親学級でした。

ボディセンス・インスティテュート主催の“企業主導型”両親学級は、2022年から富山県で地元企業の協賛を得ながら始まり、これまで2000人以上の参加者が参加しました。2025年には石川県でも開催されるなど、活動エリアが広がっており、大阪でも開催されることになりました。

地域の力で開催する大阪の両親学級

ボディセンス・インスティテュートは、産前産後マタニティヨガやQOLを高めるためのシニアヨガ講師養成講座などを国内外で展開しています。大阪開催のきっかけは、所属する南大阪エリアの先生たちでした。

「南大阪のヨガの先生たちが、大阪でも両親学級をしたいという思いを持っていて、やりたいと思う人が集まって開催することになりました。」(髙橋さん)

“企業主導型”両親学級の特徴の1つは、行政だけでなく、企業や地域の人々が主体的に関わっている点です。髙橋さんによると、泉大津の地元議員が「行政での取り組みも充実させていく必要があるし、民間の取り組みも応援して、みんなが必要なものを選択できるようにしていこう」ということで尽力してくれたそうです。地域ぐるみでの実施が広がりつつあります。

ボディセンス・インスティテュートの先生たちが司会などを務めます

両親学級は、国が定めている制度で、すべての人が希望すれば参加できますが、全国的にみても、両親学級の受け入れ率は出産数のわずか1割前後。大阪府内では5~6%しかない地域もあり、大きな課題となっています。だからこそ「行政に任せるだけでなく、地域や企業とともに仕組みをつくることが必要」と髙橋さんは話します。

「企業や議員さん、行政の窓口の方が応援してくれています。どの立場にいるかではなくて、子育てにまつわる現状をより良くしていこうとする人のつながりでこのプロジェクトが成り立っています。民間も行政も企業も関係なく皆で協力して1つの取り組みを実現していくことが大事です。」(髙橋さん)

産後うつや児童虐待問題 企業主導型で解決する社会問題

企業主導型だからこそできる事もあるようです。

大きな違いは、対象者が挙げられます。
自治体主催の両親学級は、妊娠中のママとそのパートナーが基本で、産後の方は対象外となることがあります。
企業主導型では、妊娠中はもちろん、産後のママとそのパートナーや、おじいちゃんおばあちゃんなど幅広い家庭が対象となっています。

「両親学級は、少子化対策と児童虐待防止、産後うつの解消が目的です。みんなが幸せに楽しんで暮らしていくためには、結婚とか妊娠出産のという始まりの時期に、皆が協力し合える家族の形を作れるかがとても重要だと思います。パパとママだけではなく、おじいいちゃんおばあちゃんとか、兄弟連れてきてもいいので、できるだけ多くの人が子育てを支えるような世の中にしていきたいです。」(髙橋さん)

この日の両親学級でも、妊娠中のママが、他の子を抱っこする光景も見られました。産後の方が参加できることで、実際の赤ちゃんを抱っこする経験ができたり、実際の赤ちゃんを育てている雰囲気や状況がどんな様子かわかります。産後の方は、子育てがスタートしてわからないことや聞きたいことが出てくる方が相談できる場にもなっています。参加者同士の交流も、両親学級の重要なポイントになっています。

また開催日についても、企業主導型は土日祝日に開催されることが多いので、お仕事をしているパパやママでも参加できるなどメリットがあるようです。

地域企業が中心となって、「子育てに優しいまち」を育てる

「小さなお子さんに商品やサービス提供している企業や、社員の家族向けに福利厚生を充実していきたいという企業が協力してくれるようになって、企業主導型の取り組みが広がりました」(髙橋さん)

企業主導型の両親学級は、協賛企業による活動資金の支援や場所の提供などによって成り立っています。
一方、協賛企業にとっては、自社商品のサンプリングや販売、パンフレットによるPR、地域貢献の実践などのメリットも。住民との信頼関係構築につながります。

「みんな赤ちゃんだった時代もあって、それぞれ親以外にも支えてもらって今があると思います。自分が大人になった時にも、優しい気持ちとか思いやりの循環で、自分の子育て以外にも積極的にかかわる大人が増えることが、社会にとって必要です。」(髙橋さん)

企業主導で地域の見守りや、子育て世代を応援することで、行政・企業・住民の地域連携を強くしていく。
この活動がもっと全国に広がることで、「子育てに優しい」世界が広がっていくのではないでしょうか。

泉大津で開かれた“企業主導型”両親学級の開催内容については下記の記事をご参考ください↓
泉大津の“企業主導型”両親学級レポート① 赤ちゃんを寝かしつけられる抱っこや、食事を通した赤ちゃんとのコミュニケーションなど耳寄りな情報が盛りだくさん!!

【一般社団法人ボディセンス・インスティテュート】
「企業主導型両親学級」概要ページ:https://bodysence.jp/program/company/papamama
大阪の両親学級について(11月30日に岸和田市で開催):https://bodysence.jp/osaka-papamama